中国語単語にSRS(間隔反復)を使う方法
SRS(間隔反復)は、忘れそうなタイミングでカードを再表示して記憶を定着させる学習法です。Anki はその代表的なフラッシュカードアプリで、自分で単語カードを作ると、次の復習日はアプリが自動で決めてくれます。
ただし、スケジュール管理は簡単なほうです。中国語でSRSがうまくいくかどうかを決めるのは、カードの中身です。カードの作り方を間違えると、「見たら分かるけど、読めない・言えない」単語ばかりが増えます。
日本語話者が特にはまりやすい落とし穴
日本語話者は漢字が読めるぶん、中国語学習で大きく得をします。学生(xuésheng)、问题(wèntí)、参加(cānjiā) は、意味を見なくても見当がつきます。
この「分かってしまう」ことが、SRSでは落とし穴になります。カードをめくって「正解」を押しているのに、その語のピンインも声調も一度も思い出していないという状態が起きるからです。テストしているのは意味だけで、発音は素通りしています。
対策は単純で、中国語を見たら声に出してから答えを開くこと。声に出せなければ、その語は「まだ覚えていない」と扱います。日本語訳が同じでも使い分けが違う語(似た中国語単語の使い分け)も、漢字の見た目に引きずられやすいので、意味のほうも油断しないでください。
良いカードに入れるもの
学生(xuésheng) を覚えるなら、最低限これを入れます。
- 中国語: 学生(xuésheng)
- 意味: 学生
- 例文: 我是学生(wǒ shì xuésheng)。
- 音声、または音声を確認できる辞書リンク
例文は「意味が明らかな語」にも入れてください。提高(tígāo) を「高める」とだけ覚えても使えませんが、提高水平(tígāo shuǐpíng)(レベルを上げる)というかたまりで入れておけば、何と一緒に使う語なのかが分かります。例文は辞書からそのまま持ってくるのが早道です(辞書の例文を使い倒す)。
認識と産出を分ける
「中国語を見て意味が分かる」カードと、「日本語を見て中国語を言う」カードは別物です。
- 中国語 → 意味: 読解用。问题(wèntí) を見て「問題・質問」と分かる。
- 意味 → 中国語: 会話・作文用。「問題・質問」から 问题(wèntí) を、正しい声調で声に出して言えるようにする。
後者はしんどいので飛ばされがちですが、飛ばすと読解だけ伸びて聞き取りと会話が置いていかれます。時間がないときは、実際に自分が使いそうな語だけ産出カードにするのが現実的です。
声調をテストの一部にする
声調は最も抜けやすい部分です。頭の中で「正解」と思っていても、実際には違う声調で言っていることがあります。
- 答えを開く前に声に出す。頭の中で思うだけだと、声調を覚えていたのか当てずっぽうだったのか区別がつきません。
- 声調だけが違う語をペアでカードにする。买(mǎi)(買う)と 卖(mài)(売る)は、声調を間違えると意味が逆になります。
声調記号そのものが読みにくい段階なら、復習回数を増やすより四声(声調)の仕組みを読み直すほうが早く、ピンイン声調カラー表示で色分けして確認するのも有効です。
1日に何枚追加するか
新規カードはあとから復習として何度も戻ってきます。今日10枚追加すれば、以後の数週間はその分の復習が毎日上乗せされ、1日の復習枚数は新規枚数の数倍に膨らみます。
- 1日10枚: 多くの人が続けられる枚数。
- 1日20枚: 毎日まとまった復習時間を確実に取れる人向け。「やる気が出ない日」も含めて取れるかで判断します。
よくある失敗は、最初の週末に100枚入れて、木曜には復習が回らなくなり、アプリごとやめてしまうパターンです。2週間だけ1日50枚より、1年間1日5枚のほうが最後に残る語彙は多くなります。
どうしても覚えられないカードの直し方
何度やっても失敗するカードがあります。これは記憶力の問題ではなく、カードの設計ミスであることがほとんどです。
- 1枚に詰め込みすぎ: 分割する。1枚1項目。
- 例文が使えない: 自分が言いそうな文に差し替える。
- 似た語と混ざっている: 觉得(juéde)(〜と思う・感じる)と 感觉(gǎnjué)(感覚・感じ)のように、漢字を共有し訳も重なる語は入れ替わりやすくなります。違いそのものが覚えたい項目であるときに限り、2枚で戦うよりあえて1枚にまとめて対比ごと覚えるほうが早くなります(原則は「1枚1項目」で、これはその例外です)。
- まだ必要のない語: 削除する。デッキの外で一度も出会っていない語に10回失敗する価値はありません。
HSKの語彙からカードを作る
やみくもに語を集めるより、受ける級の公式語彙から作るほうが確実です。HSK単語ブラウザ&マイ単語帳で級別に★を付けて集められますし、級別の単語ページ(HSK1級〜HSK6級)にはピンインと例文が載っていて、そのままカードに写せます。級の中でどの語を優先するかの考え方はHSK頻出単語の覚え方にまとめています。
一番よいのは読んだり聞いたりして実際に出会った語で、これは文脈ごと記憶に入るので定着が違います。
まとめ
- 難しいのはアルゴリズムではなくカードの中身。
- 漢字・ピンイン(声調記号つき)・意味・例文・音声を入れる。
- 「読める」と「言える」を分けて練習し、答えを開く前に声に出す。
- 新規枚数は、調子の悪い日でも回せる数にする。
- 覚えられないカードは、回数を増やさず作り直すか捨てる。
関連: 単語の覚え方 / 辞書アプリで単語を復習する。